新しい出会いのカタチは、ご近所の「コミュニティスクール」にありました

[ チルドリン vol.03 2006年2月発行より ]


ここは世田谷のコミュニティスクール。
いろんな宝物を発見して、育てられる場所なのです。

大人になってからお友達をつくることはとても難しいことだと思います。
しかし興味や関心が同じであれば仲良くなるのは簡単。
けれども百貨店の「カルチャースクール」は気取った感じだし、公民館の「生涯学習講座」だとなんだか堅苦しい感じがする。
リラックスしながら習い事もできて、友だちも増やせる場所は、意外とご近所にあるんですよ。
たとえば世田谷線「松原」駅から徒歩2分のこの「コミュニティスクール」に、ちょっと立ち寄ってみませんか?

新しい知識や教養を身につける喜びは、年を経ても変わることはありません。人々の学びたいという欲求は、とても正しいものです。料理や語学はもちろんのこ と、最近ではバレエやヨガなどのお稽古ごとが盛んです。お教室やカルチャースクールに通う女性も増えています。しかし、そこが「習い事」でしかないのな ら、ちょっともったいないと思いませんか。同時に気の合う友だちができたり、自分の暮らしに直接役立ったり、一歩踏み込んで自分が暮らす社会と関わること ができたら、毎日がもっと楽しくなります。

「コミュニティスクール」は日々の暮らしを豊かにすることをテーマに、地域に密着した講座を開いています。女性の日々の暮らしを充実させるために役立つ講 座が多いのが特徴的です。「カルチャースクール」とは雰囲気を異にする「コミュニティスクール・まちデザイン」について、代表を務める近藤惠津子さんにお 話をうかがいました。

「『自分たちの暮らしを、自分たちでよくしよう』というのが根本にあります。目指すところは、一言で言うとまちづくり。『まち』という言葉のなかには、自 分の暮らしも含まれています。『自分の生活をもっと豊かに、そして楽しくするためには、人とつながることが必要不可欠なのです』。そうしたことを追求した 結果、わたしたちの『コミュニティスクール』が生まれました」

百貨店などで盛んに開催されている「カルチャースクール」と異なり、最初の目標が「コミュニティのための、あるいはコミュニティを活性化するための」学びの場となっているところです。そこには、単なる講座屋さんにならないようにという願いが込められていました。

「『よい講座があるから来てね』というでことではなく、できれば一つの講座が何かのきっかけになって、そこで出会った人たちとつがることが講座の目標で す。自分の地域に帰って学んだことを活かして、何かのきっかけをつくれればいいと思います。学びプラス人と人との出会いの場をつくりたいと考えています。 もちろん、何かを学びたいということだけでもいのですよ」とテキパキと語る近藤さんは、普通の主婦でした。

「おかしな話なんですけど。私が今こうしているのは、『友だちが欲しい』という理由からはじまったんです。二人目の子どもが生まれたばかりの頃、引っ越し た先の公園に、同じくらいの子を持つ人がいなくて淋しかったんです。そんなとき、上の子をベビーカーに乗せて、下の子をおんぶして買い物してる姿を見られ て、たいへんそうだからと『生活クラブ生協』に誘われたんです。班会というものが毎月あって、私にとっては唯一、大人との会話ができる場所だった。だから すごく楽しくて。地域の情報を聞くことができる唯一の場所でもあったのです」

この「コミュニティスクール・まちデザイン」は母体が生協ということも手伝って、「食」に関する講座が充実しています。

「たとえば、健康で楽しい食卓作りを提案する〈食のコンシェルジュ養成講座〉を開いています。また、小学校の総合的な学習時間で食に関するオリジナルの授 業なども行なっています。地元小学校の要請を受けて総合学習の授業を担当するという、新しい試みにも挑戦しているのですよ」

子どもたちにとっても、また大人たちにとってもお互いの学びの場になっているというこの総合学習への取り組みは、子どもたちに教えるたろに、まずは自らが 学ばなければ教えられません。教える側も教えてもらう側も、学ぶ楽しさをともに体験することができる画期的なプログラムだと思いました。また、食べ物が スーパーまで運ばれるあいだにどのくらい移動距離があるのか、そのエネルギーはどのくらい使われているのかという「フードマイレージ」についても学習して います。こうして楽しく「食を学ぶ」ことで、食にたいする意識も自然に変わっていきます。一方で食の楽しさを持続させるには、食材が提供され続ける必要が あります。そのために自分はどうすればいいのか、少しでも考えられる人の方がステキだと思いませんか? 昨日までの自分と異なる物の見方ができるようにな れば、日々の食材を選びはただのお買い物ではななるはずです。

[ チルドリン vol.03 2006年2月発行より ]