楽しい本のリサイクル「えほんグルグル」を知っていますか?

[ チルドリン vol.07 2006年発行より ]

もう読まないけれど、捨てられない。
そんな絵本2冊と1冊を交換してくれるユニークなシステム「えほんぐるぐる」。
ただの古本リサイクルではありませんよ。
ちょっとしたアイデアと工夫によって古い絵本に、新たな価値が生まれます。

おそらくどこの家庭でもある、眠ったままの絵本。これを2冊持っていくと、好きな絵本1冊と交換できる楽しいシステムがあります。その名も「えほんぐるぐる」。なんだかとってもユニークで、ワクワクするような響きです。
「えほんぐるぐる」に参加したいと思ったら、世田谷区奥沢にあるpohhe(ポッヘ)というお店に行きましょう。かわいい雑貨があふれる店内には、ユーズ ド絵本が本棚に並ぶ「えほんぐるぐる」のコーナーがあります。壁で仕切られた空間は、まるで秘密基地のよう。ここでは絵本を交換するほかに、椅子に座って 自由に本を読むこともできます。
「pohheは子ども向けのお店みたいだけど、僕は大真面目に大人向けのショップとしてつくりました。大人が見て思わず童心にかえるような、そんなものを 揃えています。そういう意味では絵本もいい例。『絵本は子どものもの』って決めつけたら子どものものになってしまうけど、じゃあ大人が見ても感動しないのか、といったら決してそうではないですよね。『絵本は大人のもの』であってもいいんです」

こう話すのは、pohheを経営するD&DEPARTMENT PROJECTの代表、ナガオカケンメイさん。ロングライフデザインをテーマに、デザインのリサイクル活動を行っています。「えほんぐるぐる」はその一連 のプロジェクトのひとつ。実は絵本には長年愛されているロングセラー商品が多いということを知れば、このショップで絵本が扱われているのはとても自然なことなのです。

pohheがオープンする前から、ナガオカさん「子どもが喜ぶなにかをぐるぐるさせたい」というアイデアを温めていました。ご自身が6歳と10歳の娘さん のパパでもあるからこそ、日々の暮らしの中に多くのヒントがあったのでしょう。
「子どもが新しい絵本やおもちゃに興味をもっているのは、せいぜい 20~30分が限度です。子どもからしてみれば、その手にしているものが30円だろうが3000円だろうが、あまり関係のないことなんですよ。それより も、見たことのないものや新しく触れるものの方が、子どもにとっては価値があることなんですよね」

成長の早い子どもたち。カラダも心もどんどん大きくなるから、大人が用意してあげるものは次第に合わなくなっていきます。その成長に合わせて、古いものを 捨てて新しいものを次々買い足していくことが当たり前の時代ですが、そうするよりも、必要な人同士で欲しいものを「ぐるぐる」できたらいいなとナガオカさんは考えていたようです。

「えほんぐるぐる」では”交換”という原始的な方法を採用しているので、お金が発生することもありません。そのうえ、他の古本リサイクルとは決定的に異なる、 流通を活発にさせる素晴らしい秘密を持っています。それは、古い絵本に”新しい価値”を吹き込んだ楽しい演出。たとえば、絵本を交換したときに押せるスタ ンプカードがあります。1回「ぐるぐる」するごとに眉毛や目、口などのスタンプを押すことができ、15個あつめると顔ができあがります。最後に手書きのペ ンで髪の毛を書き足せばカードは完成。それをpohheのお買い物券と交換してくれるのです。大切なのは、そんな遊び心。ただ古いものを再利用するのでは なく、ちょっとした洒落っ気を加えてリサイクルの行為自体を楽しもうというアイディアが、「いらない本」を「誰かに読んでほしい本」へ変身させてしまうのです。
「中古おもちゃを消毒したあと箱詰めして、毎月いろんな家庭にぐるぐるする『おもちゃぐるぐる』もいつかやりたいな」と次なるプランをナガオカさんは話し てくれました。D&DEPARTMENT PROJECTでは、「新しくものをつくらない」ことをモットーとしています。すでに生み出された良いもの、いかに「もう一度使うか」「もう一度欲しいと 思うものに戻すか」を常に考えているそうです。

まだまだ使えるものが、簡単に廃棄されている時代。「ぐるぐる」に参加することで、リサイクルの必要性を感じとってみてください。ものを簡単に捨てない姿勢を、子どもと一緒に考える良いきっかけとなるかもしれません。

【access】
pohhe(ポッヘ)
東京都世田谷区奥沢8-3-2 D&DEPARTMENT 1F
03-5752-0120 / 12:00~20:00(水曜定休)
http://web.d-department.jp/shop/pohhe

[ チルドリン vol.07 2006年発行より ]