高岡先生に教えていただいた、もうひとつの賢いお金の使い方

[ チルドリン vol.02 2005年12月発行より ]

お金の使い方が変われば、
私たちの暮らすこの世界だって
あっという間に変えられるのです。

ここにふたつのメロンパンがあります。どちらも同じ値段です。
ひとつはコンビニで売られていたメロンパン。
もうひとつは福祉作業所でつくられたメロンパン。
あなたはどちらのメロンパンを食べますか?
クリスマスプレゼントやお年玉など年末年始はいろいろとお金を使う機会が増える季節です。
ちょっとまじめな取材になりましたが、ママといっしょにお金と消費について考えてみたいと思いました。

消費としての100円と、投資とし ての100円は異なります。一般的に、私たちはお給料をもらって、そのなかで家賃、光熱費、食費を払って、さらに洋服を買ったりして、残った分を貯金して いると思うんです。子どものお年玉も同じで、ゲームなど好きなものを買って、あまったら「貯金箱に入れておいてあげるね」というのでいいと思うんです。貯 めておくのは、銀行に預けるのがいいのか、今だったらネットトレードとか(笑)。どこに預けておくのが利回りがいいかを考えること自体は、悪くないことだ と思います。ただ、そればかりが強調されるこの世の中ってどうなんでしょう…。なるべく利率がよいところに預けて、お金が増えていく。さらに増えたお 金をどこかに預けて投資して増やしていく。そうやって、人はお金を増やしつづけていますが、最終的にはモノやサービスに変えないと、人間の楽しみにはなら ないですよね。

当たり前ですけど、もともとお金というのは何の意味もないものです。昔は物々交換をしていたわけです。ところが、自分が持っているモノが相手の欲しいモノか わからない。そこで、とりあえず貨幣(お金)という媒介物に変えておいて、自分が欲しいモノがあるときに貨幣を使えばいいというシステムになったんです。 ということは、貨幣は、いつか何かに交換しない限り意味がないモノなのですよ。貯金通帳の数字が増えていくだけ、紙幣の数が増えていくだけなんです。つま らないですよね。例えば、お金を使うときのことをよく考えてみてください。自分の払った(交換した)お金が最初にお店に入って、そのお店の仕入れ先にま わって、最終的には生産者のところに行くはずです。理論上は。だから、たとえば不祥事を起こした企業に対して不買運動が起きると、その企業は危うくなりま す。つまり、私たちが何かを買わなければ企業はすぐつぶれちゃうわけです。ということは、私たちが日々の生活でなにげなく無意識に使ってるお金をもとに、 企業は生きているんです。私たちの懐を狙って、マーケティングして、コマーシャルを打って…。あの手、この手を使って「うちの製品買ってね」とアピー ルしていますが、あれは企業の切実な願い攻撃なんですよ(笑)。私たちが買い続けないと、企業は倒れてしまうのです。毎 日、何気なく100円、1000円というお金を使っているけど、実は企業を応援する、投票する行動といっしょなのです。ある会社の製品を買うことと、企業 に「存在してていいんだよ。がんばってね」ということとがいっしょになります。消費は「清き一票」なんですよ。だから、もう少し買うときに、真剣にお金を 使ってほしい。

もう一つは、固定観念にとらわれる必要はない、ということです。たとえば割高な高級なブランドのバッグを買うのは損なのかというと、そのブランドの価値を見 いだしていれば気持ちが充足されているから無駄ではありません。さらに、原材料は少なくてすみます。なぜなら、5千円のバッグを10年間毎年買うより、5 万円のバッグを1個買って10年間使う方が、材料が少なくてすむので環境にやさしいことになるんです。よく環境派とかサステナブル(持続可能な)経済を語 るときに誤解されるのは、「資源は使わない方がいい」と理解されてしまうことです。しかし、モノもサービスも消費しない(お金と交換しない)と、経済は循 環しなくなります。めぐりめぐってみんな貧乏になってしまいます。みんな楽しい生活を送りたいですよね。だから、お金は使わないといけないのです。しかし その使い方が、とても大切なことなのです。

どうせ使うお金なら、ちょっと考えて使うと気持ちがよいじゃないですか。何も考えずに買うよりは、このお金で何ができるのかを、ちょっとだけ考えてみてくだ さい。毎日のお買い物が、意味のある行動に変身するのですから。最近話題の「ホワイトバンド」もよいことだと思うんですよ。でも、普段買わない物をわざわ ざ買うよりは、コーヒーや紅茶などの日用品などをフェアトレードのアイテムにするとか、毎日食べるパンを福祉作業所で働いてるひとのつくるパンにすると か。そして子どもたちにも、そういったことを教えてあげて、いっしょにお金の使い方を考えてみてください。「なんでこれを買ったの?」。そんな会話が増え れば、子どもたちのお金に対する考え方も変わっていくと思うんです。

【profile】
高岡美佳 (たかおか・みか)
立教大学経済学部助教授
1994年、青山学院大学経営学部経営学科卒業。96年、青山学院大学経営学研究科経営学専攻博士課程前期課程修了。99年、東京大学経済学研究科経済史専攻博士課程修了。同年、大阪市立大学専任講師。2001年、同助教授。02年、立教大学経済学部経営学科経済学研究科助教授。専門は「流通経済論」。消費行動が小売り企業の経営戦略に与える影響について研究。

フェアトレードアイテムを扱うショップ

●ピープル・ツリー自由が丘店
東京都目黒区自由が丘3-7-2、03-5701-3361

●ピープル・ツリー表参道店
東京都渋谷区神宮前5-12-10、03-5469-6333

●第3世界ショップ
Asante Sana目黒店
東京都目黒区三田2-7-10-102、03-3791-2147

●ウィメンズショップ・パッチワーク
東京都渋谷区神宮前5-53-67東京ウィメンズプラザ1階
03-5469-1612 内線432番(東京ウィメンズプラザ代表)

障害者の自立と社会参加を支援するショップ

●スワンベーカリー銀座店
東京都中央区銀座2-12-15、03-3543-1066

●アニモShop
(社団法人日本フィランソロピー協会)
東京都千代田区丸の内2-6-1古河ビル618、03-5252-7580

[ チルドリン vol.02 2005年12月発行より ]