「チャイルドライン」でつながる心の糸

[ チルドリン vol.01 2005年11月発行より ]

子どもたちはいつも「話したいこと」がたくさんある。

ママのみなさん「チャイルドライン」を知っていますか?
お説教ナシ、押し付けナシ、子どもたちの話にただただ耳を傾け、その声を受け止めてくれる専用電話のことです。
子どもたちは、そんな電話の向こうの見ず知らずの人にいったい何を話しなくて電話をかけてくるのでしょうか?
「チャイルドライン」から見えてくるリアルな子どもたちの状況を見つめてみました。

小学3年生ほどの女の子がお母さんと電車に乗っていました。女の子はしきりに「ねえ、ねえ」「ママ、ママ」とお母さんの袖を引っぱり何かを話そうとしています。けれどもお母さんは 「ちょっと、後にして…」と女の子に取り合いません。視線の先には携帯電話。そう、お母さんはずーっとメールのやりとりをしているのです。女の子は、何かをあきらめたようなため息をひとつつくと、それからひと言も口をききませんでした。

もしも、この女の子が「チャイルドライン」の存在を知っていたなら、このときお母さんに話したかったことを誰かに聞いてもらえたかもしれません。「お母さんは、私の話をちっとも聞いてくれないの」と愚痴を言うだけでも、心にため込むよりはスッキリするはずです。「チャイルドライン」は、そんな「何かを話したい」と思っている子どもたちのための専用電話です。匿名でかけることができ、何を話してもかまわない、切りたくなったら切ってよしと、主導権は子どもが握っています。

「もしもし子ども電話相談室?」と思ってしまうかもしれませんが、そうではありません。お説教や指示、指導などは一切なし。秘密厳守。問題解決を急がない。なにより「子どもの声を聞き、子どもが自ら考え行動する道をさぐる方向を目指すこと」を主眼としています。

日本の「チャイルドライン」は1998年に東京の世田谷でスタートしました。99年には支援センターが設立され、現在では全国で61団体(常設55団体、 特設6団体)が活動を展開しています。電話をかけてくる子どもの男女・年齢別の割合は、小学生女子16%、高校生男子15%、中学生男子12%、中学生女子9%、小学生男子、高校生女子と続きます。では、どんなことを話しているのか、チャイルドライン支援センター常務理事の佐藤節子さんにお話をうかがいま した。
「最初は『ちょっと暇だからかけてみた』というような雑談や日常的なおしゃべりでかけてくる子どもがほとんど。『あ、ほんとに電話がつながった』と確認するだけの子もいます。そんなやりとりを通じて子どもたちからの信頼を得られると、少しずつ本気の悩みを話してくれるようになっていきます」

なんてことのない日常会話。子どもたちからの電話で一番多いのが、このケースだといいます。一見すると、重大な悩みなどなく平和的に感じますが、実は子どもたちのシビアな状況を反映しているとも考えられるのです。
「通常なら、親や兄弟、友だちに話すようなことを電話してくる。ということは、話す相手がいないということですよね。どうも、今の子どもたちは、他人の目を気にするあまり、自分のことを表現できないのではないかと感じてしまいます。人間関係に臆病で、つねに『いい子』でいようとする。『勉強ができればいい』『問題をおこさなければいい』という大人の勝手な尺度で子どもを見るようになってしまった社会の体質が根底に流れているからなのではないでしょうか。 だから私たちは、まずその子の存在をすべて肯定し、認め、共感するよう心がけて対応しています」

電話の内容は、雑談以外にも、いじめや虐待、性のことなど、シリアスなことも多々あるそうです。その内容を「危機的情状」と判断した場合は、他の専門機関と連携を取れるようなシステムも構築されています。
「私たちは子どもにとって、ニュートラルな立場としての『第3の大人』でありたい。電話の受け手は、研修プログラムを受けていますが、専門家にならずに子どもの気持ちに寄り添っていきたいと考えています。専門家が担う部分ではない問題を担うのがわたしたち『チャイルドライン』の役割。現実には、そこに救い を求めてくる子どもがたくさんいるのです」

チャイルドラインのスタッフは、一人でも多くの子どもたちの声を聞くために、「共通番号・24時間・フリーダイヤル」の実現に尽力しています。実現するには、行政、企業、学校、家庭という枠を取り払い、みんなの力を融合させていく必要がありそうです。

今日も、明日も、明後日も。子どもたちにはいつも「話したいこと」や「聞いてほしいこと」が山ほどあるのです。

チャイルドライン

■東京都
せたがやチャイルドライン
03-3412-4747、16時~21時(月曜日~土曜日)

中野子ども電話
03‐3229‐2525、16時~21時(月曜日~土曜日)

東京シューレチャイルドライン
03-3350-6424、17時~21時(木曜日)

めぐろチャイルドライン
03-5701-2520(ユース)、17時~21時(第3土曜日)
03-5701-2519(大人)、17時~21時(木曜日)

えどがわチャイルドライン
03-3674-6677(常設)、19時~22時(毎月5のつく日)

しながわチャイルドライン
03-3494-8872、19時~22時(金曜日)

八王子チャイルドライン「コッコロ」
0426-44-2232、18時~21時(水曜日)、14時~17時(土曜日)

子どものでんわ★21
0426-31-8353(八王子)、18時~21時(日曜日・月曜日)

チャイルドラインむさしの
0422-52-5100、14時~20時(月曜日・火曜日)

子どもの電話ゆう・YOU・友
0422-32-7117(武蔵野市)、17時~21時(月曜日)

■神奈川県
よこはまチャイルドライン
0120-433-339、16時~21時(月曜日・木曜日

かわさきチャイルドライン
0120-874-262、16時~22時(祝祭を除く水曜日)

■埼玉県
さいたまチャイルドライン
048-486-8888、13時~21時(月曜日・水曜日・木曜日)

■千葉県
チャイルドライン千葉
043-204-1332(千葉市)、14時~19時(月曜日~木曜日)
04-7123-4111(野田市)、14時~19時(金曜日・土曜日)

■栃木県
チャイルドラインとちぎ
028-614-3366、15時~22時(月曜日・金曜日)

■茨城県
チャイルドラインいばらき
0297-63-0722、14時~21時(金曜日)

[ チルドリン vol.01 2005年11月発行より ]